慈悲



 幸いなるかな、貧しき人たち。天の国はその人たちのものとなるのだから。

 幸いなるかな、悲しんでいる人たち、かの日に慰めていただくのはその人たちだから。

 幸いなるかな、踏みつけられてじっと我慢している人たち、約束の地なる御国を相続するのはその人たちだから。

 幸いなるかな、神の義に飢え渇いている人たち、かの日に満足させられるのはその人たちだから。

 幸いなるかな、憐み深い人たち、かの日に憐れんでいただくのはその人たちだから。

 幸いなるかな、心の清い人たち、御国に入って神にあうのはその人たちだから。

 幸いなるかな、平和を作る人たち、神の子にしていただくのはその人たちだから。

 幸いなるかな、信仰のために迫害される人たち、天の国はその人たちのものとなるのだから。

 人の子のゆえに罵られたり、迫害されたり、見に覚えのない根も葉もない悪口を言われたりする時、あなた達は幸いである。

 喜びなさい。大いに喜びなさい。

 天に大きな報いがある。

 あなた達より前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。

 預言者と同じくあなた達は地の塩である。世の腐敗をふせぐのが役目である。
 しかしもし塩が塩気を失ったら、その塩は何によって塩気をもどすのか。
 土にも肥料に適さず、もはや、外に捨てられるだけである。

 あなた達は世の光である。

 山の上にある町は隠れることは出来ない。また、明かりをともして枡の下に置く者はいない。
 入って来る人に光が見えるように、燭台の上に置く。そうすれば、家の中のもの全てを照らすのである。

(あなたの身体の燈火は目である。目が澄んでいれば、あなたの全身が明るいが、濁っていれば、身体も暗い。
 だから、あなたの内にある光が消えていないか注意しなさい。
 あなたの全身が明るく、少しも暗いところがなければ、ちょうど、燈火がその輝きであなたを照らすときのように、全身は輝いている。)

 そのようにあなた達の光を世の人の前に輝かしなさい。

 人々があなた達の善い行いを見て、あなた達の天の父をあがめるようにしなさい。



 わたしが律法や預言者・預言書(聖書)を廃止するために来たと思ってはならない。
 廃止するどころか、成就するためにきたのである。

 あなた達は昔の人が(モーセから)”目には目、歯には歯”と命じられたことを聞いたであろう。
 しかしわたしはあなた達に言う、悪人に手向かってはならない。
 だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。
 あなたを訴えて下着を取ろうとする者には、上着をも取らせなさい。
 誰かが無理に一ミリオン(一キロ半)行くように強いるなら、一緒に二ミリオン行きなさい。
 求める者には与えなさい、借りようとする者に背を向けてはならない。


 あなた達は昔の人が(モーセから)”隣の人を愛し”敵を憎みなさい、と命じられたことを聞いたであろう。
 しかしわたしはあなた達に言う、敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。
 あなた達が天の父の子であることを示すためである。

 父上は悪人の上にも善人の上にも日をのぼらせ、正しい人にも正しくない人にも、雨をお降らしになるのだから。
 自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。
 徴税人でも同じことをするではないか。
 また兄弟にだけ挨拶したからとて、なんの特別なことをしたのだろう。
 異教人(不信者)でも同じことをするではないか。

 だからあなた達は、天の父が完全であられるように完全になりなさい



 見てもらおうとして、人の前で善行をしないように注意しなさい。
 さもないと、あなたがたの天の父のもとで報いをいただけないことになる。

 だから、あなたは施しをするときには、偽善者たちが人からほめられようと街道や街角でするように、自分の前でラッパを吹き鳴らしてはならない。

 アーメン、わたしは言う。

 彼らはすでに報いを受けている。
 施しをするときは右の手のすることを左の手に悟られてはならない〔知らせてはならない〕。
 あなたの施しを人目につかせないためである。

 そうすれば、隠れたことを見ておられる父が、あなたに報いてくださる。


(わたしの言葉を聞いているあなたがたに告げる。

 敵を愛し(慈悲)、あなた方を憎む者に親切にしなさい(善行で報いる)。
 悪口を言う者に祝福を祈り、あなた方を侮辱する者のために祈りなさい。

 あなたの頬を打つ者には、もう一方の頬をも向けなさい。
 上着を奪い取る者には、下着をも拒んではならない。
 求める者には、誰にでも与えなさい。
 あなたの持ち物を奪う者から取り返そうとしてはならない。
 自分にしてもらいたいと思うとおり、人にもしなさい。

 自分を愛してくれる人を愛したところで、あなた方にどんな恵みがあろうか。
 罪人でも、自分を愛する人を愛するのだから。

 また、自分に良くしてくれる人によいことをしたところで、どんな恵みがあろうか。
 罪人でも同じ事をしている。

 返してもらうことを当てにして貸したところで、どんな恵みがあろうか。
 罪人さえ、同じものを返してもらおうとして、罪人に貸すのである。

 しかし、あなたがたは敵を愛しなさい(慈悲)。

 そうすれば、たくさんの報いがあり、至高者の子となる。
 至高者は、恩を知らない者にも悪人にも、情け深いからである。
 あなたがたの父があわれみ深いように、あなた方もあわれみ深い者となりなさい。)




 あなたがたは地上に富を積んではならない。

 そこでは、虫が食ったり、錆付いたりするし、また、盗人が忍び込んで盗み出したりする。

 富は、天に積みなさい。

 そこでは、虫が食うことも、錆付くこともなく、また、盗人が忍び込むことも盗み出すこともない。

 あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだから。




 誰も、二人の主人に仕えることはできない。

 一方を憎む(厭い離れる)か他方を愛するか、一方に親しんで他方を遠ざけて親しまないかどちらかである。

 あなた方は、神と富とに仕えることはできない。






  キリストの説く言葉、それは善である。

  光の人たちの説く言葉、それは善である。

  仏陀の説く言葉(真理)、それは善である。





















inserted by FC2 system