更訂 H28.12.8
階級の平等について 階級の平等に関しての事柄です。 人間はみんな平等です。 アッサラーヤナ青年 このように私は聞いた。 あるとき、世尊はサーヴァッティー(舎衛城)のジェータ林にあるアナータピンディカの園(祗樹給孤独=祗園)に滞在しておられた。 ところで、そのとき、サーヴァッティーの町には、諸国のバラモンが五百人ほど、それぞれ何らかの所用があって、住んでいた。 さて、そのバラモンたちはこのように考えた、 「かの沙門ゴータマは四の階級の平等を説いている。いったいだれがこの問題について沙門ゴータマと対論できるであろうか」と。 ところで、そのとき、サーヴァッティーにアッサラーヤナという青年が住んでいた。 彼は年若く、頭を剃っており、生まれて十六歳であった。 三つのヴェーダ(圍陀)の奥義に通達し、語彙・活用論・音韻論・語源論とともに、第五としての古伝説にも通達し、聖典の語句と文法とに通じ、詭弁的哲学や偉大な人のもつ身体の特徴についても完全に通じていた。 そこで、そのバラモンたちは考えた、 「サーヴァッティーには、あのアッサラーヤナ青年が住んでいる。 彼は年若く、頭を剃っており、生まれて十六歳である。三つのヴェーダ(圍陀)の奥義に通達し、語彙・活用論・音韻論・語源論とともに、第五としての古伝説にも通達し、聖典の語句と文法とに通じ、詭弁的哲学や偉大な人のもつ身体の特徴についても完全に通じている。 かれならこの問題について沙門ゴータマと対論することができる」と。 そこで、そのバラモンたちはアッサラーヤナ青年のところへ赴いた。 そうして、アッサラーヤナ青年にいった、 「アッサラーヤナ君、かの沙門ゴータマは四の階級の平等を説いている。 アッサラーヤナ君、君は行って沙門ゴータマとこの問題について対論しなさい」 このようにいわれて、アッサラーヤナ青年はそのバラモンたちに答えた、 「みなさん、じつに沙門ゴータマは真理の教えを説く人です。 真理の教えを説く人というのは対論しがたい相手です。 私は沙門ゴータマとこの問題について対論することはできません。」 バラモンたちは再びアッサラーヤナ青年にいった、 「アッサラーヤナ君、かの沙門ゴータマは四の階級の平等を説いている。 アッサラーヤナ君、君は行って沙門ゴータマとこの問題について対論しなさい。 君はすでに遍歴の生活を送り終えているのだ」 アッサラーヤナ青年は再びそのバラモンたちに答えた、 「みなさん、じつに沙門ゴータマは真理の教えを説く人です。 真理の教えを説く人というのは対論しがたい相手です。 私は沙門ゴータマとこの問題について対論することはできません。」 バラモンたちは三たびアッサラーヤナ青年にいった、 「アッサラーヤナ君、かの沙門ゴータマは四の階級の平等を説いている。 アッサラーヤナ君、君は行って沙門ゴータマとこの問題について対論しなさい。 君はすでに遍歴の生活を送り終えているのだ。 君は戦わずして敗者となってはいけない」 このようにいわれて、アッサラーヤナ青年はそのバラモンたちに答えた、 「みなさん、私にはほんとうに不可能です。 じつに沙門ゴータマは真理の教えを説く人です。 真理の教えを説く人というのは対論しがたい相手です。 私は沙門ゴータマとこの問題について対論することはできません。 それでも、みなさんのお言葉に従って、私は行くことにいたしましょう」 そこで、アッサラーヤナ青年は大勢のバラモンといっしょに世尊のところへ赴いた。 そうして、親愛と敬意に満ちたあいさつの言葉を世尊と交わしてから一方に坐った。 一方に坐ったアッサラーヤナ青年は世尊に言った、 「尊者ゴータマよ、バラモンたちはこう言います、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。 これについて尊者ゴータマはどう言われますか」 「アッサラーヤナよ、しかし、バラモンの妻女でも、月経はあるし、妊娠もするし、出産や授乳もしているのは周知のことである。 かのバラモンたちは、母胎から生まれていながら、それでもこのように言う、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ヨーナとカンボージャおよびその他の辺境の国々では、貴族と奴隷という二つの階級しかなく、貴族であってものちに奴隷となったり、奴隷であってものちに貴族となったりする、ということをそなたは聞いているか」 「尊者よ、私は聞いております。 ヨーナとカンボージャおよびその他の辺境の国々では、貴族と奴隷という二つの階級しかなく、貴族であってものちに奴隷となったり、奴隷であってものちに貴族となったりする、と」 「アッサラーヤナよ、この場合、バラモンたちにはどんな力があり、どんな確信があって、彼らはこのようにの言うのであるか、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、この場合、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 王族の人がもし生きものを殺し、盗みをはたらき、愛欲にまかせた淫らな行いをし、嘘をつき、中傷の言葉をはき、粗暴な言葉をつかい、無駄口をたたき、貪り求め、憎悪の心をいだき、誤った見解をもっているならば、彼は身体が破壊して死んだのちに苦しみの世界、悪いところ、落ちる世界、地獄に生まれるであろうが、バラモンはそうではないのか。 また、庶民や奴隷が、もし生きものを殺し、盗みをはたらき、愛欲にまかせた淫らな行いをし、嘘をつき、中傷の言葉をはき、粗暴な言葉をつかい、無駄口をたたき、貪り求め、憎悪の心をいだき、誤った見解をもっているならば、彼は身体が破壊して死んだのちに苦しみの世界、悪い世界、地獄に生まれるであろうが、バラモンはそうではないのか」 「尊者ゴータマよ、それは違います。 尊者ゴータマよ、王族の人でも、もし生きものを殺し、盗みをはたらき、愛欲にまかせた淫らな行いをし、嘘をつき、中傷の言葉をはき、粗暴な言葉をつかい、無駄口をたたき、貪り求め、憎悪の心をいだき、誤った見解をもっているならば、彼は身体が破壊して死んだのちに苦しみの世界、悪いところ、落ちる世界、地獄に生まれるであろうが、バラモンはそうではないのか。 また、庶民や奴隷も、もし生きものを殺し、盗みをはたらき、愛欲にまかせた淫らな行いをし、嘘をつき、中傷の言葉をはき、粗暴な言葉をつかい、無駄口をたたき、貪り求め、憎悪の心をいだき、誤った見解をもっているならば、彼は身体が破壊して死んだのちに苦しみの世界、悪い世界、地獄に生まれるでありましょう」 「アッサラーヤナよ、この場合、バラモンたちにはどんな力があり、どんな確信があって、彼らはこのように言うのであるか、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、この場合、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 バラモンが、もし生きものを殺すことから離れ、盗みから離れ、愛欲にまかせた淫らな行いから離れ、嘘をつくことから離れ、中傷の言葉から離れ、粗暴な言葉から離れ、無駄口から離れ、貪り求めず、憎悪の心をいだかず、正しい見解をもっているならば、彼は身体が破壊して死んだのちに善いところ、天の世界に生まれるであろうが、王族の人はそうではないのか。庶民はそうではないのか。奴隷はそうではないのか。」 「尊者ゴータマよ、それはちがいます。 尊者ゴータマよ、王族の人でも、(庶民でも、奴隷でも、)もし生きものを殺すことから離れ、盗みから離れ、愛欲にまかせた淫らな行いから離れ、嘘をつくことから離れ、中傷の言葉から離れ、粗暴な言葉から離れ、無駄口から離れ、貪り求めず、憎悪の心をいだかず、正しい見解をもっているならば、彼は身体が破壊して死んだのちに善いところ、天の世界に生まれるでありましょう」 「アッサラーヤナよ、この場合、バラモンたちにはどんな力があり、どんな確信があって、彼らはこのように言うのであるか、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、この場合、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 バラモンだけが、この国では敵意や憎悪のない慈しみの心を修めることができるが、王族の人はそうではないのか。庶民はそうではないのか。(奴隷はそうではないのか)」 「尊者ゴータマよ、それはちがいます。 尊者ゴータマよ、王族の人でも、この国では敵意や憎悪のない慈しみの心を修めることができます。 バラモンでもそうです。尊者ゴータマよ、庶民でもそうです。尊者ゴータマよ、奴隷でもそうです。 尊者ゴータマよ、四の階級の人すべてが、この国では敵意や憎悪のない慈しみの心を修めることができます」 「アッサラーヤナよ、この場合、バラモンたちにはどんな力があり、どんな確信があって、彼らはこのように言うのであるか、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、この場合、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 バラモンだけが背中を洗う道具や洗い粉をもって川へ行き、塵や垢を洗い去ることができるが、王族の人はそうではないのか。庶民はそうではないのか。(奴隷はそうではないのか)」 「尊者ゴータマよ、それはちがいます。 尊者ゴータマよ、王族の人でも、背中を洗う道具や洗い粉をもって川へ行き、塵や垢を洗い去ることができます。 バラモンでもそうです。尊者ゴータマよ、庶民でもそうです。尊者ゴータマよ、奴隷でもそうです。 尊者ゴータマよ、四の階級の人すべてが、背中を洗う道具や洗い粉をもって川へ行き、塵や垢を洗い去ることができます」 「アッサラーヤナよ、この場合、バラモンたちにはどんな力があり、どんな確信があって、彼らはこのように言うのであるか、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、この場合、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ここに、灌頂を受けた王族の王が、さまざまな生まれの人を百人集めて言うとしよう、 『このなかで、王族の家系、バラモンの家系、王家に生まれた諸君は前へ出よ。 サーラの木や、栴檀の木や、パドゥマカの木でつくった火きり棒をとって、火を起こし炎を燃え立たせよ。 また、このなかで、身分の低い家系、猟師の家系、竹細工師の家系、車造りの家系、清掃人の家系に生まれた諸君は前へ出よ。 犬の餌桶や、豚の餌桶や、染色用の桶や、エーランダの木の棒切でつくった火きり棒をとって、火を起こし炎を燃え立たせよ』と。 アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 このように、王族の家系、バラモンの家系、王家に生まれた者が、サーラの木や、サララの木や、栴檀の木や、パドゥマカの木でつくった火きり棒をとって起こした火、燃え立たせた炎だけに、火の光焔や色彩や輝きがあって、その火によって火の用を為しうるが、 しかし、身分の低い家系、猟師の家系、竹細工師の家系、車造りの家系、清掃人の家系に生まれた者たちが前へ出て、 犬の餌桶や、豚の餌桶や、染色用の桶や、エーランダの木の棒切でつくった火きり棒をとって燃え立たせた炎には、火の光焔や色彩や輝きがなくて、その火によって火の用を為しえないのであるか」 「尊者ゴータマよ、それはちがいます。 尊者ゴータマよ、王族の家系、バラモンの家系、王家に生まれた者が、サーラの木や、栴檀の木や、パドゥマカの木でつくった火きり棒をとって起こした火、燃え立たせた炎には、火の光焔や色彩や輝きがあって、その火によって火の用を為しえます。 また、身分の低い家系、猟師の家系、竹細工師の家系、車造りの家系、清掃人の家系に生まれた者が、サーラの木や、栴檀の木や、パドゥマカの木でつくった火きり棒をとって起こした火、燃え立たせた炎にも、火の光焔や色彩や輝きがあって、その火によって火の用を為しえます。 尊者ゴータマよ、すべての火にはみな火の光焔や色彩や輝きがあり、すべての火によって火の用を為しえます」 「アッサラーヤナよ、この場合、バラモンたちにはどんな力があり、どんな確信があって、彼らはこう言うのであるか、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「たとえ尊者ゴータマがそう言われましても、この場合、なおバラモンたちはそれをこのように考えます、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ここに王族の少年がいて、バラモンの少女と同棲するとしよう。彼らの同棲の結果、子供が生まれるとする。 王族の少年とバラモンの少女とのあいだに生れた子供であれば、その子供は母と同じであり、父とも同じであって、王族とも言うことができるし、バラモンとも言うことができよう」 「尊者ゴータマよ、王族の少年とバラモンの少女とのあいだに生れた子供であれば、その子供は母と同じであり、父とも同じであって、王族とも言うことができますし、バラモンとも言うことができます」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ここにバラモンの少年がいて、王族の少女と同棲するとしよう。彼らの同棲の結果、子供が生まれるとする。 バラモンの少年と王族の少女とのあいだに生れた子供であれば、その子供は母と同じであり、父とも同じであって、王族とも言うことができるし、バラモンとも言うことができよう」 「尊者ゴータマよ、バラモンの少年と王族の少女とのあいだに生れた子供であれば、その子供は母と同じであり、父とも同じであって、王族とも言うことができますし、バラモンとも言うことができます」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ここに、牝馬を驢馬と交配させるとしよう。それらの交配の結果、子馬が生まれるとする。 牝馬を驢馬とのあいだに生まれた子馬であれば、その子馬は母とも同じであり、父とも同じであって、馬ともいうことができるし、驢馬ともいうことができよう」 「尊者ゴータマよ、それは異種交配によって生まれた騾馬であり、尊者ゴータマよ、この子馬に関しては、騾馬という別名で呼ばれるという違いが見られますが、その他の点においては何の違いもないと認めます」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ここに、同じ母から生まれた二人のバラモン青年の兄弟がいるとしよう。 一人はヴェーダ(圍陀)聖典を学習し、それに熟達している。 一人はヴェーダ〔圍陀〕聖典を学習せず、それに熟達していない。 この場合、バラモンたちは、まずどちらに、死者に供えた食物、乳粥の供物、祭式の供物、来客用の食物を食べさせるであろうか」 「尊者ゴータマよ、その場合、バラモンたちは、ヴェーダ聖典を学習し、それに熟達しているバラモン青年に、まず、死者に供えた食物、乳粥の供物、祭式の供物、来客用の食物を食べさせるでありましょう。 尊者ゴータマよ、ヴェーダ聖典を学習せず、それに熟達していない者にたいして与えられた施しに、どうして大きな果報がありましょう」 「アッサラーヤナよ、これをどう考えるか、 ここに、同じ母から生まれた二人のバラモン青年の兄弟がいるとしよう。 一人はヴェーダ聖典を学習し、それに熟達しているが、品行が正しくなく、性格が悪い。 一人はヴェーダ聖典を学習せず、それに熟達していないが、品行が正しく、性格が善い。 この場合、バラモンたちはまずどちらに、死者に供えた食物、乳粥の供物、祭式の供物、来客用の食物を食べさせるであろうか」 「尊者ゴータマよ、その場合、バラモンたちは、ヴェーダ聖典を学習せず、それに熟達していないが、品行が正しく、性格の善いバラモン青年にまず、死者に供えた食物、乳粥の供物、祭式の供物、来客用の食物を食べさせるでありましょう。 尊者ゴータマよ、品行が正しくなく、性格が悪い者にたいして与えられた施しに、どうして大きな果報がありましょう」 「アッサラーヤナよ、先に、そなたは生まれを問題とした。 生まれを問題としてから、ヴェーダ聖典に移った。 ヴェーダ聖典に移ってから、そなたは私の説いているこの四の階級を平等とする立場に帰って来た。」 このように言われたとき、アッサラーヤナ青年は沈黙し、当惑し、肩を落とし、顔をうつむけ、消沈し、答える術なく坐っていた。 アッサラーヤナ経
アッサラーヤナはこのように言う、 『バラモンこそが、最上の階級であり、他の階級は劣っている。バラモンだけが白い色であり、他は黒い色である。バラモンだけが清浄であり、バラモンでない者はそうではない。バラモンだけがブラフマー神の実の子であり、その口から生まれたのであり、ブラフマー神から生じ、ブラフマー神によって造られた、ブラフマー神の相続人である』と。」 しかし、 バラモンであっても、バラモンでなくとも、人としての出生に変わりはなく、 バラモンであっても、王族であっても、のちに奴隷となったりするし、奴隷であってものちに貴族となったりもする、 その故に、バラモンとして出生した人が、最上の階級でありつづけるわけでもなく、また、他の階級に出生した人が、劣った階級でありつづけるわでもない。 また、バラモンであっても、バラモンでなくとも、悪行を行なえば地獄に出生するし、善行を行なえば天の世界に出生する。 また、バラモンであっても、バラモンでなくとも、四の階級の人すべてが、敵意や憎悪のない慈しみの心を修めることができる。 また、バラモンであっても、バラモンでなくとも、清浄となることができる。 また、バラモンであっても、バラモンでなくとも、清浄となることができ、清浄な心で火の用を為しえる。 また、バラモンであっても、ヴェーダ〔圍陀〕聖典を学習せず、それに熟達していなければ、施しに大きな果報がない。 また、バラモンであっても、ヴェーダ聖典を学習し、それに熟達しているが、品行が正しくなく、性格が悪ければ、布施に大きな果報はない。 要するに、 バラモンであっても、悪行を行なえば地獄に出生するし、善行を行なえば天の世界に出生する。 バラモンでなくとも、悪行を行なえば地獄に出生するし、善行を行なえば天の世界に出生する。 地獄に出生するバラモンは、黒く(悪行があり)、清浄ではないと言われる。 天に出生するバラモンは、白く(善行があり)、清浄であると言われる。 地獄に出生するバラモンは、黒く(悪行があり)、清浄ではなく、ブラフマー神の相続人ではない故に、地獄へと出生する。 天に出生するバラモンは、白く(善行があり)、清浄であり、ブラフマー神の相続人としての故に、、ブラフマーの世界、天の世界へと出生する。 バラモンでも、品行が正しくなく、性格が悪く、黒く(悪行があり)、清浄ではなく、ブラフマー神の相続人ではないとして、地獄に出生する者もいる。 バラモンではない者でも、品行が正しく、性格が善く、白く(善行があり)、清浄であり、ブラフマー神の相続人であるとして、ブラフマーの世界・天の世界に出生する者もいる。 では、果たして、 ブラフマー神の相続人ではないとして、地獄に赴く者であり、黒く(悪行があり)、清浄ではないが、「バラモンの子として生れた」と言う者にする施しと、 ブラフマー神の相続人として、ブラフマーの世界・天の世界に赴く者であり、白く(善行があり)、清浄であるが、「バラモンの子として生れたのではない」と言う者にする施しとは、どちらに大きな果報があるだろうか。 また、どちらが聖人・善なる人といわれるだろうか。 答えは、 ブラフマー神の相続人として、ブラフマーの世界・天の世界に赴く、白く(善行があり)、清浄である、生まれはバラモンではない者にする施しに大きな果報がある。 そして、この、ブラフマー神の相続人として、ブラフマーの世界・天の世界に赴く、白く(善行があり)、清浄であるが、「生まれはバラモンではない」と言う者が、天の世界に赴く聖人・善なる人といわれる。 そのように、バラモンであっても、バラモンでなくとも、ブラフマー神の相続人として、ブラフマーの世界・天の世界に赴く、聖人・善なる人にする施しに大きな果報がある。 このようにして、そなたは、仏陀の説いているこの四の階級を平等とする立場に帰って来た。 |